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とよはし芸術劇場にて『こどもとおとなのためのお芝居 暗いところからやってくる』をみてまいりました。

とある家に引っ越してきた家族、そこに「この世の裏側にあるもうひとつの世界」が出てくるお話。
それは、なんの世界かはわからない。
でも身近かもしれない世界。
あれ、もしかして…と、感じさせる、なにか。
ホラーとまではいかないけれど、不思議な世界が繋がるお話でした。

こどものための、こどもも楽しめるお芝居でして。
ステージを3方向から囲むような座席配置。
1列目は、ステージと同じ高さで、とても近いです。
そして、開演前はステージ上を歩いてセットを間近で見られる。
あちらこちらにシールが貼ってあって、こどもたちは何個見つかるかあちこちのぞきこんで見ていました。

すぐ目の前で、さっき見ていたセットの中で、物語が始まる。
セットは子供部屋。
いろんなシーンを見ながら、「あるある!」みたいなことを言っている子もいて、お芝居を身近に楽しめるようになっていました。

近くで動くからこちらに風が来たり、物が飛んできたり、じっと見られたり。
すぐ隣から出てきたり。
あちこちに目が向き、びっくりしたり、笑えるやり取りに爆笑したり、光や影の変化にわくわくしたり。
お芝居も夢中で目を向けられるような楽しめるものでした

こどもにわかりやすく、でも前川さんらしく説明し過ぎず。

ステージの設置は体験したことあるけど、こどもに向けたこういう形のお芝居もおもしろかった。
良かったです。

イキウメの役者さんたちも大好きなのですよね。
動きとか、声とか。

これはこども向けなんだけど、おとなに向けて作ったらまたちょっと違う静かなものができるのかな、とも思いました。
それはそれで、おもしろそう。





物語は、亡くなったおばあちゃんの家に越してきた家族のお話。
「何か気配を感じる敏感な男の子」が主人公。

男の子、輝夫の部屋。
何かがそこにはいるのか、それとも、おばあちゃんが亡くなったから何か感じるのか。
家族の住むこの世界とはまた別の空間が、そこにはうっすら見えてきて。
そして。

「暗いところからやってくる」者たちの世界が見えてくる。
彼らは何者なのか、何をしているのか。
そして、おばあちゃんは。

2つ、3つ、と世界が広がっていきました。
暗いところの者たちの世界、おばあちゃんのいる世界、男の子と家族の世界。
あっ…と、気づき、見え、知り。
いろんな角度で、この時を見ることができる。
現実と、妄想と、夢と、異次元と…。

そうか、世界はひとつとは限らないよね、と自分に問いかけたくなりました。
4次元の世界?

見える物だけを想って普段過ごしているけれど、身の回りにはたくさんの影や動くものがいるのかもしれない。
後ろにいるかもしれない。
見られているかもしれない。
いるかもしれない。
もしかしたら、互いに何も感じず生きているかもしれない。
いろんなことを想像しました。

不思議な感覚になりつつも、目の前で起こっている彼らの日々に引き込まれ。
ステージが近いだけあって、手が届く距離で演技をしてたり、物が転がったり、というのもあって。
またひとつ違う世界からそれを見ている自分たち、という。
おもしろかったです。






引っ越してきた輝夫の過ごす部屋。
敏感な彼は何かが部屋のなかにいる、暗闇から見ていることを感じている。
亡くなったおばあちゃんなのか。
ありえない、と言われるけれど、いると感じている。
それは、彼がおばあちゃんと別れてしまったことで、後悔していることがあるからだった。

でも、そこにいたのはおばあちゃんではなく「暗いところからやってくる」者たち。
輝夫には見えていない彼らの動向を見ていると、本当に別世界には彼らがいるんだろうな、と思える形で彼らは出てきていました。
物音が鳴るとか物が動くとか、影か見えるとか、わあーっとなるような存在でした。

そんな「暗いところからやってくる」彼らは、何者なのか。
新人、先輩、監督。
先輩たちが、いずれ人間は死に僕らが彼らを乗っとる、今は人間たちをよく観察するとき、と話している。
うちゅうじん、のようなもの?と見ている側は思う。
くものような動き、人間の概念はわからないことが多い。
しんりゃく?

慣れなく、やらかす新人くんと輝夫が、ハプニングで繋がり。
輝夫と一緒に彼らを怖がってみるけど、どうやら、そんな物騒な話ではなさそう。
おばあちゃんのことも想う輝夫くんだからこそ、の展開。

おばあちゃんへ言いたかったことを言えていない。
お母さんやお姉ちゃんは、わかってくれない。
言っちゃいけないことを胸に抱えつつ、一生懸命、自分の想いを伝えようとする輝夫の姿に泣きそうになりました。
苦しいよね、頑張ってるんだよねと。

それを理解しきれず、少しずれたところから見るお母さん。
優しいけれど、違うんだ。
輝夫の声が聞こえそうでそれにも泣きそうになりました。
大人はね、安心させようとこどもにそういう態度を取りたくなるものなのよ、と思いつつ、それじゃダメなんだなと。
胸が痛くなるシーンがありました。

そして、暗闇の彼ら。
はっきりと何者なのかは明かさなかったけれど、いつか輝夫がこどもを持つことになったら…という話が出てきて。
しんりゃくではなく、彼らは自分たちかもしれない、と。
うわーっと、感心。
そうか、それだとこれまでの伏線がわかる…と。

もちろん、やっぱり彼らは別の世界にいる。
そして、そばにいる、というのはおもしろい。
良いお話でした。