火曜に,『イキガミ』を観に行ってまいりました。

うーん・・・ちょっとわかりづらい作りの映画でした。
世界観や描きたいことが曖昧かなーというところで。
いろんなコトが中途半端な気がして,ちと参りました。
おもしろい話だし,ドラマがある。
そんな社会って!という驚き,そして最後の1日を生きる人たちの姿に泣く。
これをひとつの映画にしたら,ストーリーはいろいろ考えられる。
でも。

なんだか小さなドラマを繋ぎ合わせただけの映像のようでした。
イキガミ一枚を取り巻くドラマはそれぞれよかったんだけど,その瞬間の周りの社会が見えて来なくて。
だから単発で起こったドラマとしか見られない。
コミックそのままを起こした映像みたい。

なんだろ。
このイキガミがある国が,いまいちちゃんと描かれていないのかなあ。
どのように社会の中でイキガミが位置付けられてるのか,国がどんなところまでやっているのか,社会がどうなっているのかがはっきりしない。
少なくとも何十年かは続いている制度なのに,テレビで毎日発表されてるのに,犯罪率が下がっているとかいうデータも出てくるのに。
なんだか身近な制度ではないみたい。

もちろん,イキガミを良いと言う人,良いと思う人,届ける人,受け取った人,否定する人・・・いろんな人は出てくる。
でも,なんだか彼らがぽつんといるだけで,他が見えないのですな。

うーん。
反思想を少しだけ見せておきながら,国によって処置されることを見せつつ,でも完全じゃない姿も見せる。
でもその落し所はないのです。

ただ,これが狙ってやっているのなら。
それが社会,という。

これがイイと押し付ける国。
疑問を持たず,いや時に持ちつつも従う役人。
疑問を持ちつつも,自分には関係ないと思う国民。
それを描いたとしたら。
そんなことを考えると,ひやーっとします。

よくあるお話なら,立ち上がる熱血ヒーローがいて,ただただ悪い敵がいて,うまく立ち回って良い世界が訪れる。
でも実際はそうはならない。
一度始まってしまった制度はなかなかなくならない。

イキガミはもちろん倫理的におかしい。
殺人だもの。
でもそれは単にデフォだと考えると,ありえないとは言えない社会が見えてくる。

そう考えると,なかなか凄い話かも。
でも,そうだとしても,やはり中途半端。
だったら,時が来たら・・・なんて,期待を持たせるようなくだりはいらない。

制度に関する人々の意見を見せるか,それともそれ自体にはあまり触れず,ただただ1日を生きる人たちを描くかどちらかにすればイイのに。
どちらに気持ちを向けたらすっきりするのかわからなくて,中途半端でした。

うーん,テレビドラマにして,ただひたすら亡くなってく人たちの1日だけを描いた方がよかったんじゃないだろうか。
その辺ひとつひとつはよかった。