まだまだ続く舞台作品の感想。
G2&後藤ひろひとの『ダブリンの鐘つきカビ人間』。

とある街が,症状はひとによって千差万別という不思議な病に襲われる。
身体に何か生えちゃう者,姿が変わってしまう者,性格が変わってしまう者・・・。
そんな街の,これまた奇妙な症状に冒されてしまった,おさえと鐘つき,2人の人間の哀しい物語。

泣きました,ほぼ号泣。
おさえちゃんと鐘つきの深い哀しみに,涙止まらず。
おさえちゃんが話すたびに,鐘つきが笑うたびに・・・。
そしてこの作品の狙いだったところに思いっきりハマりました。

ちなみに2005年の再演版です。
片桐仁で観たくて・・・。
これは童話。
不思議な世界,夢,哀しく切ない愛の物語。
さらりとしただけではきっとわからない深い深いお話。

ただもう,おさえちゃんと鐘つきに泣けます。
2人の姿に,表情に,その心に,胸が痛くなります。

これを書いた大王はこの作品を,「客が頭を動かして観なきゃならない」ところがおもしろいところなのだと言っておりました。
そうなのですなあ。

おさえちゃんが出てくるたびに,考える。
この人は今何を考えているのだろう。

ただ街の人たち目線で,泣きながら叫ぶおさえちゃんに悲しさを感じる。
外側から見る客として,おさえちゃんの言葉と悲しく苦しい表情にある気持ちにつらくなる。
そして,鐘つきがそのおさえちゃんの言葉を受けて複雑な想いをすることにも・・・。

頭を動かせば動かすほど,2人に気持ちが入っていきます。
いや,鐘つきにでしょう。
そして鐘つきを通しておさえちゃんに気持ちが入る。

おさえちゃんとフィアンセやお父さんとの会話は笑えるのです。
でも相手が鐘つきになると,哀しい。

「早く上がってきて!お願い!」
引いて見れば,ただひどいおさえちゃん。
だけど,泣き崩れる彼女・・・。

耳だけで聴くと笑えるのに,おさえちゃんと鐘つきの表情を見ているとつらい。
鐘つきは笑いたいのに,おさえちゃんは物凄く苦しい表情をしている。

彼女の言葉ひとつで,しあわせを感じられる鐘つき。
その鐘つきが純粋なイイやつなだけに,余計哀しくなる。
(あのお父さんが薬のことを許すシーンは,鐘つきの今がよほどイイってことを伝えたいのかな?)
誰も恨もうとしない,ひたすらお昼を告げることを続けようとする鐘つき。
そういうやつじゃないと,あんな風には笑えないのだろうなあ。
彼が笑うたびに,それがどんな笑顔であったとしても,切なさを感じます。

おさえちゃんを演じる中越さんがイイです。
高めの声がかわいい。
そして,良い表情をするのです。

もちろん鐘つきの片桐さんも。

で,この2人が活きるのは,周りを取り巻く人と物語が良いからでしょう。
濃すぎるキャラいっぱいで,2人の運命を動かしていく。
フィアンセにお父さんに神父に,市長に街の人々・・・。
病気,森,剣,そして事件・・・。

病気に襲われたひとつの街の行く末,そしてそれに翻弄された人々。
哀しい街の物語。

ラストシーンが,まさしく童話です。
語り手の言葉が痛い。
あんたがそんな風に語るな・・・と観ている側は,悔しい想いで見るしかない。
「これは,2人の男女が街を救ったというしあわせなお話」なんて言葉は,ツライです。
そうかもしれないけど,2人を想うとそんな風には言えない。

「続けて!殺して!」
おさえちゃんが叫んで,動いてしまう。
何も言わない鐘つき。
叫んでしまうおさえちゃん。
「頭を動かして」泣くシーンですな。
(ああでも「ぽーぐまほーん!」って叫ぶのはちょっとどうかと思う。)

街の人たちが悪いワケじゃない。
悪魔もいるけど,でも誰かを責められるようなコトじゃないのかもしれない。
だから余計に,どうしていいかわからなくなる,哀しく切ないお話です。


もちろん笑いどころもありますぜ。
乗り物(馬はやっぱり最高だ!)関連に小道具に,ギャグに,歌に,いろいろ散りばめられています。
役者の演技も交えて,かなり楽しいシーンが満載。
哀しい物語をつぶさない程度に,たくさん。

大王のへんてこキャラは相変わらず。
イイ病気になったり,とんだ!・・・。

山内さんも相変わらず。
神父の最初のシーンの「いか〜ん,いか〜ん・・・たいへ〜ん・・・いけな〜い・・・」やら「いけぇ〜っ・・・」の顔は最高です。

それから「コーラのMを2つ・・・」に「マッチをひとついただけると・・・」あたりの2人のシーンも好きです。
もうずるいですもの。
激しい突っ込みに,微妙な間に,爆笑です。
山内さんの「はあっ・・・?」てのイイなあ。
何度観ても。
・・・全然ストーリーから離れているのですがね。
ショートコントです。
暴れん坊だよ,ホント。

神父と市長コンビも楽しいです。
でも,あのの変な人形のシーンはちょっと私はあまりおもしろいと思わないので,長く感じますがね。
中身をもうちょっと!と思う。
いいコンビなので,余計にね。(学校の話はいい!)

泣ける,でもたくさん笑える楽しい作品。


おまけでちょこっと書いておこう。

・・・現代の女の子。
歌はうまく,最初のシーンから聴かせてくれます。
だけど,うーん,観ていてちとガクッとつまづくことが・・・。
もうちょっと抑えた感じで,演技をして欲しかったですなあ。
口だけ必死に動かしている,走り過ぎちゃってるように見えました。
(時々イイときがあるのも,惜しいなあ。)

街の過去に絡んでいく役なワケだけど,なんだか必要だったのか疑問に感じるほど。
あの人が過去をだた客に語るというつくりではダメだったのだろうか。
まあ話はいろいろ膨らんでるし,つまらないワケではないんですけど・・・。