『クィーン』を観に行ってまいりました。

今から10年前の夏。
離婚し王室を離れていたダイアナが亡くなったこと,さらにその追悼を巡って起こった異例の事態を巡って苦悩した英国女王(それから就任したばかりのブレア首相)の1週間を描いたお話。

時間としては,1週間とプラスちょっと数日の出来事だけだけど,女王という人の,"公"では見えない私的な部分が静かに丁寧に描かれていたように思います。
たぶん,持っているイメージと,大きくズレず,でも意外な部分も見せつつ・・・。
エリザベス女王は,今まで全く関心を寄せたことのない人でしたが,興味深く見ることが出来ました。
で,ダイアナの事故。
バッキンガム宮殿の前に多くの人が集まり,たくさんの花が手向けられていた様子,事故原因を巡る報道なんかは,なんとなく覚えています。
だけど,王室や女王がバッシングされていたことは知らなかった。(たぶん知らなかった。)
だから,いろんな展開をわりと,ふーん・・・という感じで観てしまいました。
ホンモノのニュースや映像も差し込まれるので,ドキュメンタリーを観ているようだったし。

こうやって見ると,ロンドンに戻らなかったり半旗を掲げなかったりと王室の取っていた姿勢は理解できます。(連日の鹿狩りはわからん。)
王室というか,あの"家族"というか・・・。
ダイアナは,離婚して出て行った女性で自分のことを私人だと言っていたワケだし,すでに頭痛の種となっていた関係だった。
けど,2人の男の子の母親でもあって。
で,それから彼らは英国の王室という立場だった。
さらに,女王は英国民の気質を信じて愛していた。
だけど,想像以上にこれは異例の事態になっちゃって。

毎日新聞の一面を飾ってしまい,バッシングされる。
それを受けて,しつこく助言を繰り返す周囲。
王室への敬意が薄くなっているのを感じる。

女王のギュッと結んだ口が切ないです。

国民に全てを捧げ,女王になった女性。
国民の母・祖母である女王としての立場があって,取り巻く環境も,彼女自身の影響も大きい。
長い間女王として生きてきてて,信じているものがあって,それから"英国民をよく知って"いて,愛しているヒト。
でも,まだ女の子だったのに女王になってしまった人で,それから,お母さんであり,おばあちゃんでもあるワケで。

ギュッと口を結んだ女王が,ひとりぼっちのときや,動物の前で見せるふと見せる表情や涙に切なくなりました。
王室,女王という立場があって,思うがままだけで行動できるわけじゃなく。
"公"としての行動を求められる。
・・・苦しくても悔しくても,やっぱり女王はひとりで涙を流すしかない。

伝統もあって新しい風もあってっていう,イギリスの今がちょっと見えるお話。
でもこれってきっとこの国だけじゃなく,日本でもその他の国や地域も同じなんではないかと。
しかも今に限らず,過去にも未来にも続いていく。
何が"正しい"ってところはわからない。
人それぞれ,考え方は違う。
時代に沿っていくことも必要だし,伝統を守ることも大事。
難しいです。

で,これが女の子の姿を描いたお話だったら,がんばれーって応援して,かわいそうね・・・って思うんだろうけど,でも。
これはもう50年も女王として生きてきた,"国民の祖母"である女性のお話。
ふと見えた人間らしさに,遠い国の遠い女性が,ちょっと近くに感じられはしたけれど,でもやっぱり彼女は女王で。
前例ない事態に直面し,愛する英国民らしさを信じたけど,時代はそうでもないようで,苦渋の決断を迫られる。
そんな事態を超え,背筋をピンと伸ばし威厳を保った。
この人スゴイなー強いのだろうなーとか,長く女王として生きてきていろいろ経験をしているっていうのが身体中から滲み出ているなーと思うと,さらに遠い存在になったようにも感じました。

で,たぶんそれは,女王の描かれ方とヘレン・ミレンの演技によるものなんだろうなあ,と。
"似てる"かどうかは,チラッと顔を見たことがあるような気がする程度の女性なのでよくわかりません。
だけど,女王の威厳をちゃんと感じる。
そして,わりと無表情だけど,時折すごく人間らしいところが見える。
それはちょっとした表情だったり,しゃべり方だったり。
淡々と出来事だけを追っていたらただの眠いドキュメンタリーだったろうけど,すごく人間臭いドラマに見えたのは,さりげないそういうところがあったからでは。
ちょっとつまんないところがないワケでもないんだけど,そんなコト気にせずおもしろく見られるのは,そういうところがあったからだと思います。
周りは結構淡々とホントに脇役としてしか(フィリップやチャールズ,ブレア夫人はあんなんでイイの?)描かれていないんだけど,女王と,それからブレア首相はすごくドラマっぽい。
2人が向き合うところは特に面白いシーンでした。

それにしても,マスコミっていうのはやっぱりコワイかも。
結局,この連日新聞の一面を女王が飾るハメになってしまったのは,非難の目をどこかに向けたかったマスコミの仕業なんだろうけど,これはヒドイ。
報道されることが全てなんじゃないっていうのは,わかっているけどうっかり踊らされちゃうことも多いんだろうなあ。
そこにちゃんと気づいている(それだけじゃないけど。)ブレア首相が,この映画の中では良く見えました。
あーでも報道されないところを知ることって,そう簡単じゃないわけで・・・。
何かがイイ方向に変わるのならそれでもいいけど,何かが崩壊していくのに気づかなかったらコワイのだなあ。

なんてコトを考えるとストレスたまりそうですが,まあそれは置いておいて,ひとりの女性を描いた作品としてわりとおもしろい映画でした。
ちょっと女王に興味湧いた。