硫黄島の戦いを描いた作品『父親たちの星条旗』を観に行ってまいりました。

戦争で英雄になった父親のコトを彼の死後いろいろ知った息子が書いた話で。
硫黄島での戦いと,その後英雄とされて祖国に帰ってからの日々と,そしてその昔話を思い出しながら語るヒトたちの3つのお話が繋ぎ合わせて描かれている。

これは,戦地で実際に戦った兵士らの,ある視点から戦争の現実を描いた,ひとつの戦争映画という感じ。
兵士たちの戦いの様子とか彼らの気持ちとか,その家族の想いとか,戦死した兵士や帰還できた兵士の話とか,そういうのもあるんだけど。
そういう「戦争なんて・・・」と泣かせるだけの戦争映画らしいところもあるけど,それだけでなく。
家族を祖国に残し,戦争に赴いて戦って,で,死んでしまったり,無事帰って来られたりっていうところだけでなく。
もうちょっと,戦争中も生きていたいろんな人たちのその戦時中だけでない長い人生を,眺めたような描き方の映画でした。

劇的なフィクションなんじゃなくてこういう現実もあったんだというコトを,感情の波に流されないように,なんだか淡々と見せられた気がします。
こういう作品はあってもイイと思う。
おもしろいとかつまらないとかそういう言葉では表せなくて。
でも,見て損したとは思わなかったです。
「戦争を知っているという人たちの多くは,実際に戦地へ行っていない人たちだ」とか,「英雄とは,必要だから作り出される」とか「彼らは祖国のために戦ったが,戦友のために死んだのだ」とか,実際のセリフやナレーションは忘れちゃったけどこういう感じの話や言葉が出てきて。
映画自体はもしかしたら記憶には残らないかもしれないけれど,こういう言葉からいろんなコトを考えさせられる作品。

戦地に実際に行って,敵兵を殺したり,ともにその戦地で日々を過ごした味方が殺されたり。
戦地に行かずとも,戦時中に生き,敵の攻撃にあい,そして家族や友人たちを殺されたり。
そういう人たちがその話をするっていうのは,思っている以上にずっと大変なコトなのかもしれない。
外側から見る,体験したヒトではない周りのヒトが知れるコトやわかるコトっていうのは決して全部なんじゃなくて。
そのどれもが想像以上のコトなのだと思います。

この映画に出てくる星条旗の真実だって,その場にいない人たちにとっては,たった1枚の写真であり彼らにとっての事実と感情はほぼ大差ないコト。
でも,そこには前にも後ろにもいろんな事実があって,そのまわりにいた人たちひとりひとりにとってもそれぞれの事実と感情がある深い話。
そんなコトを思いました。

・・・うーん,自分自身が今パンクしそうなほどいろんなコトをグルグル考えている最中なので,余計にいろいろ考えてしまったのかもしれない気も。
よくわからなくなってきた。

とりあえず最後に思ったのは。
この映画の中の,1枚の写真からアメリカが胸に抱いた想いとか,誰かを英雄にするコトとか,そういうのって全部事実なんじゃなくて自分のための自分にとっての事実。
ぜーんぶ自分が必要とする事実。
人間てそういうモノをいっぱい持って,そうやって生きているんだろうなーとふと思いました。
イイこと悪いことなんじゃなくて,そういうものなんだろうな。
だから淡々と描くべき話だったのかも。

それにしても,太平洋戦争を描いた作品って,キライじゃないので一度は観るのですが,そのあと絶対に同じ作品をもう一度観たいとは思えないような気がします。
何でだろう。

えーと,役者さんたちのコトとかもいろいろ思うコトもありますが,まあひとことだけ。
ライアン・フィリップさんは,わりとこの役合っていると思う。